ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 26
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新しい受け持ち患者さんは、妙真さんの同室の方なので、私の知らない妙真さんも、全部見ていたんですね。
「アタシの学生さんだからね。」
そんな話を同室の人としていたなんて、知る由もない。
今になって、こんな話を聞くなんて…。
話を聴きながら、「学生は患者さんの前で泣いちゃダメなんだってば〜」って、必死で涙を堪えていました。
無理して笑っていた私を見て、妙真さんが伝えられなかった本音を知っていてほしいと、教えてくれました。
「おばあちゃんに、最後のわがままさせてくれて、ありがとう。」
…うつむいて、涙を拭きました。
その時はわからなくても、頑張っている姿は、誰かが見てくれているんですね。
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ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 25
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ずっと泣き続けて、夜になっても涙は止まらず、夕食の時間になっても食堂に行かず、
部屋に籠って泣いていました。
自分の愚かさが、取り返しのつかない現実を読んでしまった。
後悔が次から次へと湧いてきて、立ち上がる気力もなく、膝を抱えてひたすら泣いていました。
はるから妙真さんが亡くなったことを聞いた悠ちゃんが、私が食堂に来ていないことに気付き、
他の寮生と一緒に、食事を部屋に持ってきてくれました。
みんな慰めに来てくれるんですよ。こういう時は。
本当に学生同士は、助け合い、支え合って、実習を乗り越えていました。
その夜は、死ぬほどの後悔に、一睡もできずに涙が枯れるほど泣き続けました。
それでも涙は枯れず、いつもと同じ朝が来ました。
日が昇ってきた時、「妙真さんが亡くなって、私が死ぬほどの後悔を抱えて、
一晩中泣き続けても、いつも通り日は昇るんだなぁ・・・」と、泣き疲れた頭で、
ボーっと思ったのを覚えています。
翌日は目を腫らして学校に行きました。
メンバーも事情を知っているので、あえてそこには、触れてきませんでした。
泣いても泣いても後悔の念が湧いていて、涙が止まらない・・
こういうのを「死ぬほどの後悔」って言うんだなって、つくづく思いました。
でも人間、後悔だけじゃ死なないんですよ。
妙真さんが生きたかった明日は、私が生きている今。
しっかりしなきゃ、と思いながら、くす玉を見ては泣いていました。
翌朝、新しい受け持ちの患者さんは、妙真さんの同室の方だったので、
かつて妙真さんと過ごした病室に向かいました。
「おはようございます!」と部屋に入った時、いつもの癖でパッと妙真さんのベッドに
目が言ったんです。
入院待ちの患者さんがたくさんいるはずなのに、その日は妙真さんのいたベッドが空いていたんです。
空のベッドを見て、「これがお前の招いた現実だ」と、突きつけられた気がしました。
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ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 24
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冬休み明け、妙真さんの看護計画を先生に相談しようと、やる気満々で学校に行きました。
実習のグループメンバー、クラスメイトに新年のあいさつをして、先生を探して声をかけると・・。
「妙真さん、2日前に亡くなったの。」
一瞬、言われたことが理解できませんでした。
呆然としたまま、クラスに戻り、グループメンバーに妙真さんが亡くなったことを告げ、
驚いているメンバーを置いて、そのまま寮に戻りました。
寮に戻る道を歩きながら、聞いたばかりの先生の話が蘇ります。
妙真さんは、医師にも看護師にもご家族にも、逆らったことがなかったこと。
そんな普段の妙真さんを知っている同室の人達は、私にガンガンわがままを言う
妙真さんを不思議に思っていたこと。
先生が実習再開の相談に病棟に行った時、妙真さんが亡くなったことを聞き、
新しく受け持ちになる、妙真さんと同室の患者さんに挨拶に行き、その時にこう言われたそうです。
「おばあちゃん、最後のわがままができたのね。」
妙真さんの手紙を思い出して、号泣しました。
今更どうすることもできない後悔に、焼かれるように泣いていました。
(実際は声が漏れると迷惑なので、布団にくるまって泣いていました。)
妙真さんの夢が叶わなかった悔しさと、
もう「ありがとう」も言えない現実に、胸が掻き毟(むし)られるようでした。
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ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 23
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妙真さんの喜ぶ顔が見たくて、冬休み中、ずっと家で折り紙を折っていました。
今度こそ朝イチで、「どうぞ!」ってくす玉を渡したくて。
看護学校って、本当にもうくっっそ忙しくて、自分の時間が全く無い!ということも多々ありました。
なので、看護学校に入ってから、友達と遊ぶとかできなかったです。
そんな中で冬休みは、友達と遊びに行けるチャンスでしたが、
この時は患者さんに喜んでもらえる嬉しさを知ってしまっていたので、
「くす玉 >遊ぶ」でした。
妙真さんに、「冬休み中も遊びにおいで。」と言われていたので、病院に行こうかな、と思っていました。
でもかったるかったので、行かなかったんです。
これが後々、一生引きずることになるとも思わずに。
家でひたすら、くす玉を折っていました。
年明けに妙真さんに、くす玉を渡せると信じて・・。
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ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 22
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普段は、他愛のない話ができる幸せなんて、考えたこともなかったですが、
この時は幸せを嚙みしめながら、妙真さんとの時間を過ごしていました。
時間は無情にも過ぎていき、あっという間に実習終了時間が来ました。
時計を見てがっくりしている私を、妙真さんはいきなり私の白衣の袖を引っ張り、耳打ちしました。
「アタシの本名はね、”華子”っていうんだよ。」
なぜ急に本名を教えてくれたのかわかりませんでしたが、やっと認めてもらえたようで、
とにかく嬉しくて嬉しくて、「素敵な名前ですね!」と返すのが精一杯でした。
「みんなには内緒だよ!」と口に人差し指を当てる妙真さん。(←なんでだろう???)
この時、はるが実習前半終了の挨拶をしに来ました。
はると穏やかに話す妙真さんを見て、もっと妙真さんに喜んでほしい、
妙真さんの周りを彩り豊かにしたいなぁと思い、来年もまたいっぱいくす玉を作ることを約束。
カーテンレールいっぱいのくす玉なんていいなぁ、なんて。(←看護師さんにめっちゃ怒られるヤツ)
私はこの段階でも、また来年、当たり前に妙真さんと会えると思っていたんです。
来年も当たり前に、今と同じ穏やかで優しい時間が過ごせると。
私はこの時、思い出すべきでした。
妙真さんがいつ命の灯が消えるかわからないと、余命宣告を受けていることを。
これが妙真さんの笑顔を見る、最後の瞬間かもしれないことを…。
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ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 21
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封筒を買ってきてやっと、椅子が出してもらえました。
そこからは、孫を心配するおばあちゃんの説法でした。笑
それがたまらなく、嬉しかったです。
お昼ご飯を食べながら、くす玉を貼り続け・・・、ようやく完成!!
(いやもうほんと、間に合わないかと・・・)
よ~~うやく!妙真さんの本当に欲しかったくす玉をお渡しできました
妙真さんのはじけるような笑顔と喜びようは、私の想像以上でした。
「奇麗だねえ。私のなんだね。
もうトイレまで見に行かなくてもいいんだね・・。
いつでも見られるんだねぇ。」
私たちにとっては、なんということはないくす玉でも、妙真さんにとっては、かけがえのない彩。
ささやかな彩を求めて、点滴を引きずって、トイレまで見に行っていた・・。
「あの時‥諦めて ”できません” って言わないで、頑張って良かった。」
同じ病室の患者さん達も、声を聞きつけて集まってきました。
「キレイだろー?学生さんが、頑張ってくれたからね。」
妙真さんは他の患者さんの前で、努力を労ってくれました。
そして患者さん達はくす玉で大盛り上がり。
この時ほど、「看護」の力を痛感したことはありませんでした。
「看護を通して、人を幸せにすることができるんだ」
感動と嬉しと達成感がごちゃごちゃに混ざって、溢れてきた涙を、慌てて患者さんに背を向けて、
カーテンに隠れてこっそり拭いました。
この時の感動は、今でも忘れられません。
そして張り切って清拭の準備!
・・・をはるに見つかり、廊下にまで妙真さん達のはしゃいでた声が、聞こえてきたと言われます。
「諦めないことの大切さ」
この時ほど痛切に感じたことはなかったです。
さて、これかから恒例の「違反清拭」です!
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ラスト・レター ~原点回帰の物語~ 20
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はい、前夜に寝落ちしたので、作り終わりませんでした。
朝イチでどうぞ→やったーの夢が破れて、
病棟に行っても、カンファレンスルームで実習開始時間まで、ひたすら貼り貼りしていました。
(折る工程は終了していました。)
この頃には妙真さんの好みを完全に把握していて、「いつもの」で通じていました。
氷枕と湯たんぽの交換を、朝の情報収集の前にしたり、工夫もできるようになってきて、
患者さんに喜んでもらえる喜びを、噛みしめていました。
この日は実習前半最終日。
できるだけ妙真さんの傍にいたいのに、やたら用事を言いつけられて…。
真冬に半袖で外のポストまで行った時ですが、実際はダッシュで戻りました。
いや、だって寒いんですもん・・・。
この病院には売店があって、そこに封筒を買いに行きました。
実習中に、病棟を出ることはまずないので、はるに「脱走?」と言われました。笑
この時、はるとの会話に妙な間があるのは気付いていましたが、この時はまだ、
はるが全部知っていたとは思いもよらず・・・。
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